肛門疾患(痔)及び女性のための便秘外来(肛門の病気 前編 「3大肛門疾患とその治療」)
2012/08/01
肛門にはいろいろな病気がありますが、世間では肛門の具合が悪くなると“痔になった”と言葉にします。2回に分けて当外来が扱う肛門の病気とその最新の治療法についてご紹介します。
今回は3大肛門疾患の痔核(いぼじ)、裂肛(きれじ)、痔ろう(あなじ)についてです。最も頻度の高いのは痔核です。出血、脱出が主な症状ですが、特に排便時に肛門から脱出して困る場合は手術が必要です。手術というと、「痛いからいやだ」と思う人がほとんどですが、最近は痛くない手術ができるようになりました。痔核固定(脱出しないように固定する)や硬化療法(注射)です(図1、2)。これらは組織を切り取らないのでほとんど痛くありません。


痔核の次に多いのは裂肛です。排便時の痛みと出血が主な症状です。排便時に肛門が切れることは日常の生活で誰しも経験することですが、ほとんどは自然に治ってしまいます。頻度は低いのですが、繰り返し切れて治りにくくなったり、肛門が狭くなったりすると治療が必要になります。しかし、すぐ手術をするわけではありません。当院では日本で初めて裂肛用の軟膏を開発しました。「ジルチアゼム・ゲル」といいます。有効率は70%程度で、この軟膏を使ってみても治らない場合は手術が必要になります。
痔ろうは女性より男性に多い病気です。普段から下痢がちの人に多いようです。痔ろうは肛門周囲膿瘍といって肛門の周りに“うみだまり”ができることから発症します。“うみ”が出てしまい、肛門のなかとおしりの皮膚の間にトンネルができたものが痔ろうです(図3)。痔ろうは薬では治りませんので手術が必要です。しかし、痔ろうは肛門の締りをつかさどる肛門括約筋という筋肉を貫いているため、手術ではなるべく筋肉を傷つけないように注意しなければなりません。当院では多くの痔ろうに対して「括約筋間ろう管結さつ術」という手術を行っています。治癒率は94%です。 | ![]() |
肛門は毎日使う大事なところです。しかし、なにか異変を感じても自分でみることは難しい場所です。また、井戸端会議の話題にするにはちょっと恥ずかしいところです。肛門で気になることがあったら、気軽にクリニックへお越しください。
外科部長 角田明良