漢方のチカラ(東洋医学の世界へようこそ)
2022/5/16
皆様こんにちは。東洋医学診療科の南澤潔と申します。これからシリーズで漢方のこと、東洋医学のことについてご紹介していきたいと思います。
まずはじめに、当科(東洋医学診療科)は漢方治療の専門家で構成されている科です。
亀田総合病院に漢方の専門科があること、ご存知だったでしょうか?実はこの規模の大病院でも、専門の科があるのはかなり珍しいことなんです。
漢方薬をご存じの方は多いと思います。中国伝統医学の流れをくむ漢方医学では、主に天然の生薬を治療に用います。
「中国伝統医学」と言っても、現在中国で行われているものと日本のそれは実はかなり異なります。
中国本土のものが仮想概念的な診断を重視するのに対し、日本の漢方は現代医学と同様EBM*的な治療を重視します。まあお互いかなりのオーバーラップはあるのですが、軸足をどちらに置くかは明確な違いがあります。
起源を中国に持つものの我が国で独自の発展を遂げた、という点ではちょうど「ラーメン」と似ているかもしれません。
なんとなくラーメンの本場は中国だと思いがちですが、中国のラーメン(拉麺)はあっさりしたスープで茹でた麺におかずを載せて一緒に食べる、麺が主役の主食代わりです。
我々が大好きな、スープと麺と具材が渾然一体となって一つの完成品になっている「ラーメン」は中国でも人気があるそうですが、「日本式」と呼ばれて別のものと考えられているそうです。
われわれ日本人はこうやって外から取り入れたものに独自の発展を加えるのがとても上手で、元のものとはすっかり違うものにまで改良発展させてしまうことがよくありますね。
インドに起源を持つ、みんな大好き「カレーライス」もオリジナルの「カリ」(スパイス煮込み料理の総称)とはもうすっかり別物で、インド人が日本に来て「美味しい日本料理を食べた!」と喜んだりすると聞いたことがあります。
そんなわけで、同じような「漢方薬」を使っていても、中国とはかなり異なる医学体系になっている日本の漢方なのですが、この「中国伝統医学」を祖先とする医療は中国本土の他に台湾や韓国などでも盛んに行われています。
ただ、他国は皆この中国伝統医学を扱うには専用の医師免許が必要なのに対して、日本では現代医学の医師免許で保険診療の適応になっている漢方薬を用いることができる点が大きな違いです。
現代医学の知識も技術も習得している医師が伝統医学の薬も治療に取り入れることができるというのは、世界に誇れる我が国の医療システムの特徴です。
そのおかげで現在では様々な病気の治療に漢方薬が取り入れられていますが、漢方の専門家による漢方治療では、特定の病気に漢方薬を用いるのみならず、現代医学では問題が見つからなかったり、対処が困難な患者さまのつらい症状など困りごとに対応する事が可能です。
当院では、通常よく用いられている簡便な漢方エキス製剤に加えて、保険診療ではなかなか扱っているところがない生薬を用いた診療も含めて、健康保険の適用下で漢方治療を行っています。
漢方薬は高いんじゃないか?と心配される方も多くいらっしゃるのですが、当院ではそのようなご懸念は無用です。
煎じ薬ご希望の場合は煎じ方をご指導いたしますし、どうしてもご自宅でできない方には実費をいただき病院で煎じて真空パックで提供することも可能です。
※ | EBM:Evidenced Based Medicine の略で「科学的根拠に基づく医療」のこと |
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