お知らせ
世界情勢混乱下における病院の苦悩 (亀田総合病院長 亀田俊明) 2022/09/01
亀田総合病院長
亀田 俊明
2019年房総半島を襲った大型台風の被災から、新型コロナウイルス感染症対応と、苦しい状況が続く中でも、当院は何とか地域中核病院としての責務を果たしてきました。しかしさらに追い打ちをかけるように今年は新たな苦難が病院を脅かしています。それは皆様のご家庭でも起きていることでしょうが、コロナの影響による世界的物流の停滞に加え、ウクライナ情勢、米国の利上げなどによる物価や燃料費の高騰、円安です。
連日値上げ品目がニュースで取りざたされ、スーパーやガソリンスタンドに行けば嫌でも現実を突きつけられます。原料費が高騰しているために、企業努力ではどうしようもなく、やむなく商品に転嫁し値上げをする。つまりエンドユーザーである消費者につけが回るという仕組みです。
しかし病院はこの企業存続のための負担を診療報酬に転嫁することができません。なぜならば、病院の主な収入源である診療報酬は、国の定めた2年に1回の改定でしか変えられないからです。今年4月に診療報酬改定が行われ、全体で0.43%微増となりましたが、その内訳は新たに保険診療となった不妊治療への割り当てなどに多く割振られており、実質は0.1%台の微増でした。元々病院の平均利益率は0.1%前後ととても低いことに加え、この診療報酬微増の状態で2年間を耐えなければなりません。生活に関わる多くの物価が5~10%値上げしなくてはやっていけない状態なのに、病院は材料やエネルギー費などの高騰した分を全て自身で賄わねばなりません。
患者さまは安心して一定の価格で医療を受けることができますから、すべてが悪いとは言えませんが、医療経営の苦しい台所事情を少し紹介させていただきました。
また、これまで巻頭言などで何度か訴えてきた消費税の問題もあります。診療報酬は非課税という位置づけになっていますから、患者さまに請求はできません。診療報酬からも消費税分が支払われないため、病院が消費税の最終支払者となります。物品の購入にもすべて消費税がかかっており、これらも全て病院負担です。患者さまにも病院側にも負担が起きないような軽減税率措置などを行ってもらえるよう各方面に働きかけてきたのですが、なかなか改善には至っていません。
そうは申しても、経営面はきちんとしなければなりません。職員と協力し引き続き医療の安定供給のため努力いたします。また医療は常にポジティブに前進しなければなりませんので、先進的医療を牽引するため、治験業界のトップをゆくEPSホールディングス株式会社様と包括的連携協定を締結し、地方の医療機関では難しい高度な臨床治験など、未来の医療のための取り組みもスタートしました。